春、さくら、君を想うナミダ。[完]




その日の放課後。



彼との約束の場所へ行く前に、あたしはいったん家に帰った。



お母さんは、出掛けているようだった。



パートか買い物にでも行っているのだろう。



「モモ~!ただいまぁ」



真っ白な毛のマルチーズ。



愛犬のモモが、廊下の向こうからあたしの元へ駆け寄ってくる。



「一緒にお散歩いこっか、モモ」



あたしは制服姿のまま、



モモを連れて、彼と約束した場所へと向かった。



誰にもヒミツだと言って、あたしにだけ教えてくれた場所。



彼がこの町でいちばん好きな場所。



桜の木のそばにある湖畔のベンチ。



桜のトンネルの下を歩いていくと、ベンチに座っている彼の後ろ姿が見えた。



モモの鳴き声に、彼がこっちを向く。



「さくらっ」



彼の明るい笑顔を見て、あたしもニコッと微笑んだ。