春、さくら、君を想うナミダ。[完]




「え……?」



見つめ合ったまま、少しの間、沈黙が流れた。



「もしヒマだったら放課後、俺たちのヒミツの場所に来てほしいんだけど」



俺たちの……ヒミツの場所って……。



彼の好きな場所。



桜の木のそばにある、湖畔のベンチ。



「なんか予定とか……ある?」



「う、ううん。大丈夫」



あたしが慌てて返事をすると、彼はニコッと笑って立ち上がった。



「んっ」



彼は、あたしの前に手を差し出す。



大きな手。



いままで、男の子の手なんて握ったことない。



差し出された手を掴んでいいものなのか迷っていると、



彼が先にあたしの手を掴んで立ち上がらせてくれた。



「じゃあ……放課後」



「うん」



あたしたちは微笑み合う。



「約束な?」



彼はあたしの手を離すと、先に図書室から出ていった。



“俺たちのヒミツの場所”



彼のその言葉に、なぜかものすごくドキドキした。



やっぱり思う。



彼の笑顔は魔法みたい。



さっきまで涙が止まらなかったのに。



女子たちに悪口を言われて、つらくてどうしようもなかったのに。



彼の笑顔を見たら、悲しい気持ちが薄れて。



胸の奥があたたかくなった。