春、さくら、君を想うナミダ。[完]



その声に顔をあげると、目の前に息を切らした彼が立っていた。



なんで……?

なんでここにいるの?



あたしは慌てて自分の涙を指でぬぐった。



「それとも俺がなんかしちゃった?さくらに嫌われるようなこと」



彼は、あたしの前にしゃがみこむ。



あんなひどい態度を取ってしまったのに、彼は優しい表情であたしを見た。



「さくら?」



「ううん……」



あたしは首を横に小さく振った。



どうして、そんなに優しいの……?



「あ~よかった~。さくらに嫌われたのかと思って焦った」



彼はホッとしたような表情を見せる。



「ちがうの。そうじゃなくて……ごめんなさい」



うまく言えない。



自分の気持ち、どう話せばいいかわかんない。



ただ、彼に謝ることしかできなかった。



「ごめんなさい」



「謝らないでいいよ」



「でも……」



「さくらに英語の教科書借りたいなぁと思って、教室に行ったんだけどさ」



「英語の教科書……?」



それが用だったのに、クラスメートの悪口や視線に耐えられずに逃げ出してしまった。



最低だ、あたし。



「それと……もうひとつ」



そう言って彼は、自分の頭を人差し指でかきながら、少し恥ずかしそうな表情を見せる。



「さくら……今日さ、ヒマ?」