彼があたしに話しかけてくれたのは、入学式の朝以来だった。
教室にいるクラスメートたちの視線は、一斉に彼のほうへ向けられた。
“さくらって誰……?”
“麦田さんじゃない?確かさくらって名前じゃなかったっけ?”
女子たちのヒソヒソ話が聞こえてくる。
“なんで麦田さんのこと呼び捨てなの?”
“あのふたり仲良しとか?”
“うっそ。仲良しとかありえなくない?”
“だよね~。イケメンと地味子。笑える”
耳を塞ぎたい気分だった。
“普段おとなしいのって、女らしさアピール?”
“は?猫かぶってんの?”
“うざくね?”
あたしへの悪口は、あちこちから聞こえてきた。
胸が苦しくて泣きそうになる。
――ガタッ。
この状況に耐えられなくて、あたしは勢いよくイスから立ち上がった。



