「今日、送らなくて平気だよ」
「あ……そう。わかった」
「バイバイ」
「じゃ」
あたしは手を振って、彼の後ろ姿を見つめていた。
少し前の彼なら、何度も振り返って、
あたしに手を振ってくれたのに。
大好きな優しい笑顔で、
手を振ってくれたはず……。
だけど、いま遠ざかっていく彼は、
一度も振り返ることはなかった。
彼の姿が見えなくなり、あたしも家のほうに向かって歩き出す。
少しずつ、少しずつ。
あたしたちはすれ違っていた。
いつからか、自分でも気づかないうちに。
大切なものを見失ってしまったんだね。



