春、さくら、君を想うナミダ。[完]




「桜、満開だな」



突然後ろから声が聞こえて、あたしはくるっと振り向いた。



すると、

数メートル先に、ひとりの男の子が立っていた。



サラサラした茶色い髪が風になびく彼は、



背の高い、色白の美少年だった。



いきなり見知らぬ人に話しかけられて驚いたあたしは、



どうしていいかわからず、その場に立ちつくしたまま黙り込む。



「その制服、大崎高校だよね?」



こっちに近づいてくる彼に、あたしは戸惑いながらも小さくうなずいた。



制服を着崩している彼も、よく見ると大崎高校の制服を着ていた。



「1年生?俺、1年」



彼はニコッと笑って、あたしの目の前で立ち止まる。



「い、1年……です」



うつむいて小さな声で答えると、大きな笑い声が頭の上から降ってきた。



「アハハッ。同い年なのに敬語?中学はどこの中学?」



「えっと、その……つ、ついこの間、この町に引っ越してきたばかりで……」



緊張して、うまくしゃべれない。



「へぇ!そっかぁ。家はこの近く?」



「あ、はい……」



出逢ったばかりのあたしに、彼は明るく気さくに接してくれた。



けれど、戸惑いと緊張を隠せないあたしは、



彼の質問に対して返事をすることで精一杯だった。



「ここの桜すごいっしょ?」