厚手のコートを着ているけど、



マフラーもしてくればよかったかな……。



でも早めに家を出たとはいえ、ここから家に戻っている時間はない。



駅の改札口の前で、彼と待ち合わせをしている。



昨日から楽しみで仕方がなかった。



「さくらっ」



あたしの姿を見つけた彼が、笑顔で大きく手を振っている。



その姿に、胸の奥があたたかくなって、



あたしも笑顔で手を振り返した。



待ち合わせの時間よりも前に着きたくて、



少し早めに家を出たつもりだったのに……。



先に待っていたのは、彼だった。