春、さくら、君を想うナミダ。[完]




高校は、家から徒歩とバスで40分くらいの場所にある。



時間にかなり余裕を持って家を出たあたしは、



晴れ渡る空の下、バス停までの道を歩いていく。



すると、湖畔沿いの桜並木が見えてきた。



数キロにもわたって続く桜のトンネルは、



思わずため息がもれてしまうほどの美しい景色。



「きれぇ……」



薄ピンク色の花びらがはらはらと舞う中を、ゆっくりと歩いていく。



新しい生活は、不安でいっぱいだった。



知らない町、今日から通う高校。



この町には、知り合いも友達も誰もいない。



中学時代も友達は多い方ではなかったけど、



学校に行けば話をする友達くらいはいた。



すべてが一から始まる生活。



人見知りで内気なあたしは、この場所でうまくやっていけるのかな……。