春、さくら、君を想うナミダ。[完]




放送室の隅で、あたしたちは壁を背にして床に座っていた。



外れたブラウスのボタンもそのままで、



あたしは彼の肩にもたれかかる。



「さくら」



彼は、あたしの後ろに腕を回し、頭を優しく撫でた。



「前から思ってたんだけどさ……」



「うん」



「どうしてさくらは、俺のこと“ハルくん”って呼ぶの?」



「え?」



「名前、呼び捨てでもいいのに」



あたしは彼の肩にもたれたまま、はにかんで答える。



「学校で誰もそう呼んでる人がいないから……。特別がいいなって」



「彼女なんだから、特別に決まってんじゃん」



「ハルくん……」



うれしくて、泣きそうになった。



あたしはずっと



誰かの特別になりたかった。



誰かの1番になりたかった。



2番目じゃなくて、大切な1番に……。



「好きだよ、さくら」



「どれくらい……好き?」



「世界でいちばん好き」



そう言って彼は、あたしの頭にキスをした。



涙をこらえられなくて。



彼の肩にもたれたまま、静かに涙を流した。



こんなあたしを愛してくれる人は、この世界でたったひとりだけ。



これからもずっと、彼の1番でいたい。



他には何もいらない。



彼の1番大切な人でいられたら、それでいい……。