春、さくら、君を想うナミダ。[完]




な、なんで、あたし。



先輩に抱き締められてるの……?



「今度お礼すんね?」



先輩はあたしを抱き締めたまま、明るく言った。



「おいおい、この子、固まってんぞ?」



そばにいた先輩の友達が、笑いながらあたしを指差している。



「あっは、マジ?」



先輩はあたしの体をパッと離すと、満面の笑みを見せた。



いきなり抱きつかれたことに驚いて固まったままのあたしは、



その場から動けずにいる。



「じゃーねー」



あたしに手を振ると、先輩は友達と話しながら廊下を歩いていった。



「後輩からかうなよ~。しかも男に慣れてなさそうな子なのに」



「いいじゃん。別に~」



あたしは茫然とその場に立ちつくしていた。



先輩たちの軽いノリには、到底ついていけない。



お財布拾っただけなのに、抱きつかれるなんて。



本当にびっくりした。



ハルくん以外の男の子に触れられるなんて……。



今日はいろんなことがあって、どっと疲れた。



「……はぁ」



大きく息を吐き出した瞬間、



後ろからいきなり誰かに腕を掴まれて、体ごと引っ張られた。