「赤、ちゃん……」



蓮也は私の腕を離し、私のお腹にそっと触れた。

暖かな手の先に、命が宿ったのは3ヶ月前。

でも、どうしても今日、伝えたかったんだ。



「私からの、誕生日プレゼント」



「意味わかんねえけど、ここに……」



「…………;;」



プレゼントとしては成り立たなかった。

だけど、私には蓮也のその喜んでる様子が、どんな卒業祝いよりも嬉しい。



「住んでも良い?ここに」



「家を買う。産気付いても、すぐ外に出れる家」



「それはありがとう」



やっぱり、蓮也も人。

子供なら、蓮也を変えてくれると信じてた。

さすがにちょっと気が早い気もするけど、そこはご愛嬌と言っておこう。

それが風岡蓮也。

それでこそ私が愛した風岡蓮也。

今日は気持ちも素直に伝えよう。



「蓮也」



「あ?」



「愛してるよ」



冷たくて、不器用な男だけど。

親馬鹿なお母さんと、ブラコンのお姉さんに負けない位、蓮也が愛しい。



「男の子産めよ」



「……その前に、ちゃんと聞いてたの?」



「あぁ。愛してるんだろ?」



それに返事はしない男。

だけど抱き締めてくれただけでも、どうでも良くなる。

本当に愛してるんだから。

優しくなくて構わない。

心ではちゃんと愛してくれてて。

子供を想ってくれて。

それで私の心は、強く満たされるから――…。





                -fin-