「……えー、そこで段々と頭角を現してきたのが、織田信長です。彼はー……」




教壇に立つ先生が、偉大な先人の話をしている。


私は見開きノートの右側のページにペンを走らせながら、ぼんやりとそれを聞いていた。



「……桶狭間の戦いで、今川義元を破り……」



ーーパキ。

シャーペンの芯が折れた。そんなことに少しイラッとしながら、筆箱の中から芯が入ったケースを取り出す。



何気ない教室の風景。



頬杖をついて、つまんなそうに席に座るひと。教科書を読むひと。机にうつぶせて寝てるひと。


五月のはじめ。まだ居座り続ける春は、心地よい怠惰を呼んでくる。


目の前に広がるその光景と、ノートにシャーペンで描かれたそれをなんとなく見比べながら、ふう、と息をついた。