ここで息をする



航平くんや沙夜ちゃんが未だに私を友達だと思ってくれているのはそれとなく感じ取っていたけど、改めて言葉で示してもらうとまた一段と胸に染み入る。

気まずい関係にしてしまってごめんね、と申し訳なくなる一方で、そう言ってくれてありがとうと心の中で伝える。直接伝える勇気は、まだ私にはなかったから……。


「へえ、幼馴染みか。それはちょうどいいね。今回二人にやってもらう役は幼馴染みの関係だし、自然体で演じてもらえたらいい感じになるんじゃないかな」


役との共通点を知り、如月先輩が嬉しそうに言う。私は航平くんの顔を見れずに、その言葉に曖昧に笑った。

……そんな、上手くいくのかな。確かに私達は役と同じ幼馴染みではあるけど、最近は疎遠になりがちだというのに。

でも……今日の航平くんは、何かが違っている。どういう心境の変化か知らないけど、以前のように私と接してくれているように思う。

私が共演者だと知りながら引き受けたのも、もしかしてこの変化が関係しているのかな。……いや、高坂先輩がしつこく誘ったっていう可能性も否定は出来ない。

それに、沙夜ちゃんのようにわざとそう振る舞ってくれているだけなのかもしれない。だけど今の航平くんとなら、まだ何とか一緒に映画に参加出来るかもしれないと都合よく思ったりした。


「ねえ、立ち話も何だからそろそろ座りましょう。お客さんをいつまでも立たせているのも悪いし」

「佐原の言う通りだな。……よし! 役者も揃ったし、打ち合わせを始めるぞ!」


佐原先輩の言葉に同調した高坂先輩がパンッと手を叩いて空気を揺らし、その場を仕切り始める。

最初からこの部屋に居た部員達はもとの座っていた場所にそれぞれ腰かけて、私と航平くん、それから高坂先輩も空いていた席に落ち着いた。