ここで息をする



確かに高坂先輩はだいぶ強引だったなぁと、先日のこの場所でのやりとりを思い出して、私もつられるように密かに苦笑する。彼は部活内でも、いつもあんな感じで我が道を進む人なのだろうと思いながら。


「あたしは1年の田中志帆(たなかしほ)です! 春に入ったばかりの新人だけど、映画作りは頑張るからよろしくです!!」


最後に挨拶をしたお団子頭の彼女は、とにかく元気いっぱいだった。先に話した二人が落ち着いていたから、余計そう感じたのかもしれない。

一瞬その溢れるパワーに気圧されそうになるけど、えくぼが出来る人懐こい笑顔を見ていると緊張していた心がほぐれていった。


「……まあ、すでに知ってるだろうけど、俺は3年の高坂瑛介。部長だ。ちなみに映研部のメンバーはこれで全員だからよろしくな」


締め括るように高坂先輩が口を開いた。

高坂先輩、部長だったんだ……。改めて聞く先輩の自己紹介には、まだ知らなかった情報も混ざっていた。

先輩を併せた計四人。これが現在の、映画研究部の総メンバーらしい。

確かにこれだけの人数では制作も役者も人手が足りないだろうなと、高坂先輩に出会うまで知ることのなかった事情を今自分の目で見て、しみじみと感じ取った。

私以外の全員の挨拶が終わり、必然的に全員の目が私を捉える。それで私にも自己紹介の番が回ってきたことが分かり、ぴんと背筋を伸ばしてすっと息を吸った。


「えっと、今回映画に参加させてもらう、1年の嶋田波瑠です。初めてのことなので色々お世話になると思いますが、精一杯頑張ります。よろしくお願いします!」


切れよく頭を下げて、目の前の四人の映画研究部の人達と向き合った。