「でも映研部は、正直部員が少なくてさ。作りたい映画があっても、どうしても人が足りなくて作るのが難しくなってくる。特に役者不足が痛手だ。部員が役者と制作の両方をやってもいいけど、まあそればっかりってわけにもいかねーからな。役にはそれぞれイメージってものがあるし、一人何役もやるのは画としてもあまりよくないから」
確かに、それは難しいことだろう。制作の仕事をこなししつつ、少人数の部員で様々な役を演じなければいけない状況はさすがに大変だと想像出来る。
たとえそれが出来ても、一本の映画内で何人もがそれぞれ何役も演じていれば、観ている側はややこしく感じるだろう。意図的な一人二役などではない限り。
「役者が足りないのに、今までどうやって作ってたんですか?」
先輩の説明を聞く限り、おそらく慢性的な問題となっているであろう役者不足。だけど先輩は、毎年上映会をしていると言っていた。つまり映画は無事に作られているということ。
それならどうやってこの問題を解決しているのだろうと素朴な疑問を投げかけると、先輩は得意気な声で言った。
「いい質問だな。その答えが、おまえへの頼みと繋がってるんだ」
いたずらな笑みが向けられる。小出しにされたヒントを頼りに私が答えに辿り着こうとする過程を、楽しみながら待っているみたいだった。
そんな先輩の思惑通り、とある考えが私の中で繋がる。
「もしかして……部員以外の人が役者になるんですか?」
今言われた言葉と先程頼まれたことから、私はそう答えを導きだした。
「――正解!」
満足だと言わんばかりに、眩しい笑顔を披露される。
考えが当たったのはいいけれど、その答えは私にとってはとても厄介なものだと分かったから、素直に喜ぶなんてことは出来なかった。


