航平くんがむやみに人の個人情報を教えるとは思えないけど、友達の頼みなら教えた可能性はある。たぶん、信用している友達だからこそ。
高坂先輩もわざわざここで嘘をつく必要もないだろうし、きっと彼は本当に信用されているのだと思う。
「……あの、それで、頼みたいことって何ですか?」
少し考えた末に、意を決して私から重要そうなそれに触れた。高坂先輩が私を呼び止めた、その理由に。
友達の友達。実質私としては他人だし全然用件の内容も想像出来ないけど、聞いた内容次第で私に出来ることならその頼みを聞いてみてもいいかなって思えた。
それにもしかしたら今までことあるごとに見られていた理由は、この頼みごとをするためのタイミングを探していたからなのかもしれない。そうだとすれば、なおさら先輩の話を聞いてみる必要性を感じたんだ。
私の問いかけを受けた高坂先輩の顔が、ぱあっと嬉しそうに華やぐ。彼が口を開く前にすでに、喜んでいることを感じ取れた。
「俺の頼み、聞いてくれるのか!?」
「とりあえず、話は聞いてみます。でも頼みを聞き入れるかどうかを決めるのは、それからですよ?」
「ああ、そんなこと分かってるよちゃんと!」
まるで頼みを聞くことに了承したみたいに喜んでいる先輩に念を押したけど、すっかり舞い上がっている様子だった。
この人、本当に分かってるのかな? 喜びすぎてて、何だか不安なんだけど……。
「とりあえず、ありがとな!」
心配の種が蒔かれた私の両肩に先輩は手を置いて向き合うと、屈んで目を合わせながらお礼を言ってきた。
瞳が煌めいて嬉しそうこぼれた笑顔を間近で見せられて、思わず見惚れて固まってしまう。渦巻く不安と緊張で密かに鼓動が速まっていった。


