友達と歩いていた航平くんのもとに沙夜ちゃんが駆け寄る。同時に私の足はその場でぴたりと動きを止めて、沙夜ちゃんのあとを追うことが出来なかった。
……タイミング悪いなぁ。沙夜ちゃんに続いて航平くんにまで出くわすなんて。
ここ最近、避けているはずの幼馴染みに頻繁に出会ってしまう自分の運のなさに、ほとほと苦笑するしかなかった。
「航平もパン買いに来たの?」
「いや、ジュース」
すらりとしていて骨格が男らしい航平くんと、手足が長くてスタイルがいい沙夜ちゃん。そんな二人は顔立ちも整っているから、寄り添うように並ぶととても見映えする。
少し言葉を交わす間にもお互いを見つめている二人の間には、恋人同士らしい甘く優しい空気が流れているようだった。
確か……沙夜ちゃんと航平くんが付き合い始めて1年経ったはず。
二人を避けるようになってしまったから近況を知らずにいたけど、あの様子だと幼馴染みから恋人の関係に変わっても仲の良さは良好らしい。
二人が優しさを持ち合わせているとてもいい人同士なことをよく知っているだけに、そんな二人が思い合って付き合いが上手くいっているのなら私も嬉しい。
おまけに水泳の実力も揃って上級で、端から見てもお似合いだと言われるに相応しい二人だと思う。
……でも、どうしてだろう。ほんのちょっとだけ。
仲睦まじい二人を見ていると、心の奥をちくちくと針で刺されているような痛みに襲われてしまった。
薄暗い寂しさが自分の足元を漂っているような気がして、疎外感のようなものを感じてしまう。
同時期に水泳を始めた幼馴染みという三人の関係が、私が抜けたことで崩れているとしても。それとは別に、航平くんと沙夜ちゃんには二人だけの新しい絆がある。
そのことを目の当たりにすると、二人がすごく遠い存在になったように思えた。


