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「波ー瑠ちゃん!! 久しぶり!」
「うおっ……!」
昼休みに入って間もない一刻。
昇降口の外に備え付けられている自動販売機で飲み物を買い終えて、教室へ帰ろうとしたその瞬間。突如背後から抱きつかれた。
心臓が派手に跳ねて危うくペットボトルを落としそうになるけど、何とか堪えて安堵の息を吐く。
こんな大胆なスキンシップを遠慮なくしてくる人は、私の知人の中ではただ一人。自ずと苦笑が漏れた。
「さ、沙夜ちゃん、久しぶり……。でも暑いし苦しいから離れて」
首に巻きついた華奢に見えるけど実際はしっかりと筋肉がついている小麦色の腕をぺちぺちと叩きながら、後半は早口で訴える。
するとばっと勢いよく、慌てた素振りで私にくっついていた沙夜ちゃんが離れた。途端、身体が自由になる。
「わー、ごめんね波瑠ちゃん! 久しぶりに会えたから嬉しくてつい……!」
「いいよいいよ。いつものことだから」
私よりも背が高い沙夜ちゃんに抱きつかれるといつも押し潰されそうになって大変だけど、この熱いスキンシップにはもうすっかり慣れている。
何せ、私が4歳のときからの付き合いなのだから。
「ふふっ、ありがとう。波瑠ちゃんは優しいね」
私が嫌がっていないことを汲み取ると、沙夜ちゃんは改めて私と向き合い、ふにゃりと溶けたような笑みを浮かべた。
「……久しぶりに会えて、ほんとに嬉しいよ」
そして再度、さっき謝る流れで口にしていた言葉をこぼす。私はそれに、曖昧な笑顔を貼り付けながら頷いた。
つくづく思う。同じように会うことを避けていても、いざ会ったときの反応は正反対だなと。
航平くんはいつも気まずそうな顔をしてどう接しようか悩んでいる感じだけど、沙夜ちゃんはあえて私と関わろうと必死になっている感じだ。


