ここで息をする



プールがある高校を選んだのは、やっぱり失敗だったのかな……。

青空から降り注ぐ光を目一杯浴びて輝いているプールを眺めながら、後悔でちくりと胸が痛んだ。

自宅から一番近くて、偏差値としても一番自分の成績に合っていたから、中2の終わり頃からこの学校を志望していた。

当時は水泳部で頑張っていたし高校でも水泳を続けていたいと思っていたこともあり、なおさらこの水泳部がある高校に行こうと決めていたんだ。


でも去年の夏に、事情が少し変わる。

夏の最後の大会を前に水泳部とスイミングスクールをやめて、水泳から離れる道を選んだ。そして、私がこの学校を志望する理由は半分欠けてしまった。

そのときにいっそ進路を変えてしまえばよかったのかもしれない。でも結局私は今、ここに居る。

今となってはそれが間違いだし、甘い考えだったと思う。手放したつもりでいる水の世界を、完全には手放せていないのだから。

学校の敷地内にプールがあれば嫌でも目につく。部活に入らなくても、授業で泳ぐ機会が巡ってくる。今、この瞬間のように。

こうなることはあらかじめ分かっていた。それでもこんな状況に自ら身を置くなんて、どう考えても失敗しているんだ。

おまけにこの学校には、航平くんと沙夜ちゃんも在籍している。二人とももちろん、水泳部所属だ。

大切な友達。でも最近はすっかり気を遣い合う関係で、私は出来るだけ遠ざけようとしている。

プールといい、二人といい、遠ざけようとしているものなのに、実際私はまだこんなにも近くに居る。

気持ちと状況が一致していないなんて、なんて滑稽なのだろう。

ふっと自嘲するように口角を上げて、目の前に広がる水色から目を逸らすように空を仰いだ。プールとはまた違った鮮やかな青色をしているそこに、飛行機雲の白い線が真っ直ぐ伸びていた。