ここで息をする



「とりあえず、これ借りていきます」

「了解。返すのはいつでもいいからね」

「ありがとうございます」


今日帰ったらさっそく観よう、と心を弾ませながら、なくさないように早々にDVDケースをリュックサックの中にしまった。入れ替わりに今から必要になる台本を机の上に出しておく。


ちょうどそのとき、机上に置いてある誰かのスマホが振動を始めた。

持ち主は如月先輩らしく、表示された画面を見て「高坂から電話だ」と呟き耳に当てる。


「もしもし高坂? もう嶋田さんも来てるしそろそろ……え? ああ、うん……分かった。みんなに伝えておくよ。そっちもよろしく」


短い会話の途中で一度疑問の表情になったけど、最終的には納得した顔で如月先輩は電話を切った。


「高坂からみんなに伝言。まず嶋田さんには、今から3年1組の教室に来てほしいらしい。他のみんなはそのまま作業を続けてくれだって」

「え、私だけ? 撮影するのに全員で行かないんですか?」


いつも撮影するときは部員全員が揃っているので、一人だけ呼び出されたことに違和感を覚える。でも如月先輩は私の疑問に大丈夫だと言うように答えてくれた。


「高坂の話だと、あいつが今持って行ってるサブのビデオカメラで撮ることにしたらしい。だから嶋田さんが行くだけでいいみたいだね。シーン的に人手もいらないし、また必要になったら僕らも機材を持って合流するってことらしいよ」


事情を説明してくれる言葉を聞きながら今日の撮影の予定を思い出し、なるほどと納得しながら頷いた。

確かに今日は私一人のシーンばかりだから、カットの向きのことなどを考えても高坂先輩が一人でカメラを回して撮影するのも可能だろう。