「そこに並んでるのは映研部が作った映画だよ。あとこっちの列にあるのもそうだね」
席を立ってスチール棚の一角に“絵コンテ図鑑”なる分厚い本を戻していた田中さんが、私の視線の先を見て教えてくれた。
「これ全部? すごいね、どれもケースまでオリジナルで作ってあるみたいだし、タイトルもすごく引かれるものばかりだよ」
どれもケースの表紙にタイトルロゴが入ったイメージ写真が貼られていたし、そのクオリティーの高さから既製品だと思っていた。じっと見ていても全く気付いていなかっただけに、事実を知って軽く目を見開く。
「歴代の文化祭で上映したやつには、こうやって記念にケースも作ってるんだって。それ以外のショートフィルムをまとめたやつはほら、こうやってシンプルなケースだけど」
田中さんが1枚のDVDケースを手に取る。家庭用でもよく用いられる正方形のその表面にはシンプルにタイトルと日付を記したシールが貼られているだけで、さっきまで眺めていた縦長のケースとは異なっていた。
「すごいなぁ……。どれも面白そう」
「気になるのがあったら、好きなの借りていっていいよ」
「え、いいんですか?」
田中さんが取り出したケースを受け取って、それに収録されている作品のタイトルを眺めていたら、背後に座っていた如月先輩から嬉しい言葉をいただいてしまった。
振り返って確認すると、如月先輩はしっかりと頷いてくれる。
「僕らもOBが作った映画は自由に持ち帰って観てるし、嶋田さんも自由に借りていくといいよ」
「私、部員じゃないけど大丈夫ですか?」
「キャストは映研部の関係者だし、もちろん大丈夫だよ」
如月先輩はそこで一度言葉を切ると、ノートパソコンのキーボードの上で手を組みながらしみじみと言った。


