ここで息をする



何だか、私ももっと頑張りたいなと思えてくる。

“好き”という思いを強く抱いている人達が活躍し輝いているここには、前向きにさせてくれるパワーが溢れていた。


「そういえば、高坂先輩はどこかに行ってるんですか?」


佐原先輩だけではなく田中さんや如月先輩の作業も覗かせてもらっているうちに、約束の時間を迎えていた。

だけどこの“好き”が集う場所が一番似合う、私が今まで出会った中で一番“好き”という気持ちに正直な彼の姿だけがない。椅子の上に荷物が置いてあるから一度ここに来ているみたいだけど。

そろそろ戻ってくるのかなという思いで所在を尋ねると、作業を止めて顔を上げた如月先輩が説明してくれた。


「高坂なら風景を撮りに行ってるよ。学校の敷地内には居るはずだからそのうち戻ってくるんじゃないかな。あいつが居ないと撮影も始められないし、嶋田さんもそろそろ座って待ってなよ」


ずっと立ったままみんなの周りをうろちょろと見学していたからか、椅子を指差しながらそう促された。落ち着けということなのだろう。

いくら作業に興味があっても、見すぎたりずっと話しかけていたらみんなの邪魔をしてしまうことになる。それは申し訳ないとふと冷静になって、如月先輩の言葉に「そうさせてもらいます」と素直に頷いた。


大人しく空いていたパイプ椅子に座る。そして何気なく、そばにあったスチール棚を見上げた。

小説やハウツー本に漫画、クリアブックファイルやDVDケースが陳列されている。書籍関係はどれも映画制作に関するものや映画化された原作ばかりだ。

DVDケースに記されている映画タイトルの多くは有名な作品だけど、一部の列には全く知らないタイトルばかりが並んでいる。全国公開されていない映画だろうか。あまり積極的に映画鑑賞しない私が知らないだけで、もしかするとよく知られている作品かもしれないけど。