「まあ、良かったんじゃないですか?杉崎 昴なんて想い続けても無駄な訳ですし」

冷たい風になびく髪を、凉子がかき上げる。

「うん……でも今、どうして良いか分からないんだよ……」

「何をそんなに悩んでるんですか?センパイは彼女なんだし、本当に杉崎 佑を好きになった今、何にも遠慮する事ないじゃないですか」

「そう、なんだけど……。突然、部署移動して来たり、髪を切ったり、佑くんが今何を考えているのかが全然分からない……」

手を振り払われた事を思い出すと、怖くて動けずにいた。

「なるほど……。でも、あんまりグダグダしてると、他の人に盗られちゃいますよ?」

思いもよらない言葉が凉子から発せられ、私の頭の上にハテナマークが何個か浮かんだ。