空から雨が降る日。【完】




優子のおかげで少しは楽になったものの、やっぱりいい思い出にするにも時間はかかって。


…そもそも、
良い思い出ってなんなのだろうか。
空雨は私といて幸せだったのかな?
それは良い思い出と言えるのかな?

わかんない。
ただわかるのは、良い思い出でも悪い思い出でも思い出す度に苦しくなってしまうこと。

いつになったら、泣かないで思い出せるようになるかな。
この苦しいのは、空雨を思い出す度に続くのかな。

嫌だな、怖いな。
いっそ、死んでしまえば…


「おい、星埜!」

そんなことを考えていたとき、前から上司の声が、聞こえた。

「えっ、…あ、」

「手、止まってるぞ。どうした?」

上司を見ると、椅子やテーブルを並べてくれていて。

「あ、…すみません!」

私は頼まれた資料をテーブルに並べていた。

「よし、これでOKだな」

「ありがとうございます」

「なーに。気にすることじゃないさ。さ、あとは待つだけだ。下へ行こう」

私はその上司の言葉に大きな声で「はい!」と返事をし、皆さんが来る1階へ足を進めた。