「…ありがとう」
小さな声でボソッと言う。
私は背中を向けて上司の隣へと座る。
「…それにしても遅いなぁ」
晴太たちがついてからもう30分。
連絡もなければ、来る気配もない。
雨だからといってこんなに遅れるものなのだろうか。
一斉に周りがざわつき始める。
「連絡、取ってみます」
私は席を静かに立つ。
「あぁ、頼んだ」
この企画を提案したのはうちだ。
なにかあったらうちの責任だ。
恐る恐る受話器を耳に当て、プルルルのあとを待つ。
そして、
「――はい、」
聞こえてきたその声のあとに、私は言葉を続けた。

