「来ないなぁ」
「電車遅延してるんですかね?」
約束から20分。
晴太の会社も、もう一つの大手の会社もやってこない。
どうしたのかな、と思っているとガチャっと音を立てて扉が開く。
「あ、…」
「すみません。電車が止まってしまっていて…」
そこにいたのは、びしょびしょになった晴太やその会社の人たちで―…
「あ、私タオル持ってきますね」
廊下に出て、洗濯機が置いてある部屋に向かった。
そこは滅多に使わないけれど、いざなんかあったときのために結構色々なものが揃っていて。
「あ、あった…!」
上の方に置いてあった籠に入っているタオルを取り出して、その部屋を出る。
「これ、使ってください」
どうぞ、と――会社の人たちへタオルを渡していく。
「ありがとう」
「助かる、ありがと」
私の手からタオルを取りお礼を言ってくれる人たち。
私は笑顔でいえいえと返す。
「どうぞ風邪、ひかないうちに」
そしてその最後の一枚のタオルを、私は晴太へと渡した。

