空から雨が降る日。【完】




「…晴太?」

「んな辛気くさい顔すんなって。な?あ、からあげ食うか?俺のおごりだ」

「食べる」

「その意気その意気。すみませーん」

私が言うと手をあげてお姉さんを呼ぶ。
お姉さんははーいと答えて私たちがいる席にかけつけてくれる。

「からあげひとつと~マグロの刺身ひとつで」

「はい、かしこまりました。少々お待ちくださいね」

優しそうなお姉さんはそれだけ言って空いたグラスを下げてくれる。

「そういえば俺さーもう会えなくなるかも。こうやって」

「え?」

それはお姉さんが去った後に、晴太が放った言葉で。

「お前が取ってきたこの企画が終わったらさ、でっかい企画のメンバーに入ることになったんだよね。

ずっとやりたかった仕事でさ~だから、夜遅くなるし多分もう会えない」

嬉しそうに話す晴太は、ビールをグビッグビッと飲む。
そして元から頼んであったサラダを口に入れる。

「そ、そうなんだ…」

別に彼氏じゃないし。ただの仕事仲間だし。
それにこいつは空雨とどこか…繋がっている。

びくびく過ごしてたあの日々がもう終わる。
晴太にもう空雨のことを聞かれなくて済む。
私も、もう晴太のことを気にしないで済む。