むしろ、お店で買った方が安く済むんじゃないの?と思うくらい。
だけど諦めない優子にそんなこと、言えなくて―…
「そういえば、空雨が得意だった、よ」
「え、そうなの!?本当凄いね空雨くんって子。羨ましいわぁ…」
クレーンにしがみつく優子を見て、思い出す。
私が必死にクレーンにしがみついていたあの頃を―…
その日は確か、空雨とその友達と五人で遊んでいた時だった、かな。
男子の中に私一人女子を入れてもらっていて。
だけどこういったゲームセンターに滅多に来たこともなくて男子がやっていたゲームを見ていた。
見ているだけで退屈だった私は四人を置いて、ゲームセンターの中を周りだした。
そして
『あ…、』と目についたのは昔私が大好きだったアニメのぬいぐるみだった。
お財布からコインを取り出してゲーム機にいれる。
ボタンを押して、良い場所で離す。
そしてゆっくりと下に下がってくるクレーン。
『取れろ、取れろっ』
口に出して願いながらそのクレーンを見ていると、上がった瞬間ボタっと落ちたそのぬいぐるみ。
私は、はぁ…とため息をつきつつもまたコインをつぎ足す。
それでもそのぬいぐるみは微妙に動くだけで、全く取れる気がしなくて。
諦めればいいものの、なぜかそのぬいぐるみにしがみついて諦められなかった。

