「…凄いね」
高校の時、こういった青春を送ってこなかったから。
こんなものがあるなんて知っていたけど憧れるだけのものだった。
毎日、毎日空雨のお見舞いに行って…まあ、友達がいなかったからという理由ももちろんあるんだけど。
だからまさか自分がこんな風に撮る機会が来るなんて思っても見なくて。
「ありがとう…優―――「あ、ねえ!これ可愛い!」
お礼を言おうと顔をあげるとすぐさま次へと駆けつける優子。
私は、あはははと苦笑いをしながら写真を鞄にしまって優子の隣に行く。
「どれ?」
「あれ!可愛い~~!」
それは今女子に人気のキャラクターのぬいぐるみで。
「あれ、好きなの?」
「大好き!かわいいじゃん~~~!」
頬に手を添えて、ほしい~やってみる~!と声をあげる。
「うわ…取れない―!悔しい!」
何度も、何度も、コインを投入してはクレーンを動かし、泣きわめく。
なんだか昔の私を、見ているようだ。
顔を俯かせて、笑う。
「…雫?」
そんな私の変化にすぐに気付いてくれる優子に「ん?」と笑顔で顔をあげる。
「ねえ雫こういうの得意じゃない!?ほんっと取れないんだけどー!」
何円、いれたのだろうか。

