小さい頃、駄菓子屋に行くと空雨が必ず買っていたものはドーナツとプリンだった。
『またそれ?』
そう聞くと、空雨は必ず同じことを答える。
『だってうめえもん!』
ほとんど毎日駄菓子屋さんに通っていて、ほとんど毎日同じものしか買わない空雨に私はよく飽きないなぁと小さく呟く。
だけどそんなこと耳にも入っていないかのようにベンチに座ってドーナツとプリンを食べ始める。
でも、いつも…
『ん!あげる、雫』
二つ食べて、残りのドーナツを残して私に渡す彼。
『え、いらないよ』
そこまでドーナツが好き!てわけでもない私はいらないと言って返す。
だけど、
『遠慮すんなって!』
私が好きなんて言ってもいないのに、空雨は無理矢理私の手にドーナツを乗せ食べさせる。
だから、ドーナツは、無理にでも好きになったかのようなもんだ。
でも、プリンだけは
『ねえ一つちょうだいよ』
三つ入っているプリンの一つをちょうだいと言ってもプリンだけは絶対にくれなかった。
『嫌だね』
『ひっどい!』
どうしても食べたきゃ自分で買え、と言いそうな顔でプリンを食べながら私を見る。
どうせ私が買っても、いつも持っていくくせに。

