お母さん、おばさん、と名前を呼んで叫んでもここからじゃ聞こえるわけがない。
叫んだところで誰かが来てくれるはずもない。
あぁ私たちどうなるんだろう。
もうだめなのかな。嫌だな。悲しいな。
涙が出る。ボロボロと、溢れ出る。
空雨を見ると、空雨も怖くなってしまったのか涙には目が浮かんでいて。
『…あめ…?』
怖いものが好きで、私を無理やり連れてきた空雨。
だけど私は知っていた。
こういうことに気にはなるけど、実際起こったら怖がること。
私の手に置いて震えていた空雨の手を取ってぎゅっと握る。
『だいじょうぶ。おかあさんたちがさがしにきてくれる!だから、もうすこし、がんばろ?ね?』
自分だって怖いくせに、怖くて堪らないくせに、空雨の手をぎゅっと握って涙を堪えた。
だけど、その音、いや…声はどんどんと鳴り響いて。止まる気配は一向になくて。
もう、嫌だ。嫌だ…嫌だよ。
そう思って二人して大きな音を立ててお湯から出ようと、立ったとき―…
『『…え?』』
私と空雨の声は重なって、一つの方向を見ていた。
『うそ、でしょ…?』
そしてそこにいるものに、大声で笑った。

