それからどんなに恋をしようとしても、頭に空雨が浮かんではうまくいかない。


―『お前だけ幸せになるなんて許さない』―


まさにそう言われているみたいで。
だから交際だって、約何ヶ月…ううん早いときは何週間、で終わってしまうんだ。

私は幸せになれない。

空雨が許してくれない限り。


あぁ、…もういいよ。空雨。
私幸せなんていらないよ。だからいいよ。ごめん、ごめんね空雨。


『好きだ』
あなたに、そう言って貰えたことが、人生で最大の幸せ。


だから、


「ねえ、空雨」

私の頭上に降り注ぐ雫を手のひらにポタっと乗せて名前を呼ぶ。
上を見上げて、空を見る。
その空はどんよりと雲がかかっていた。

あぁ、私の心と同じ。
空雨がいない人生は、暗くてつまらない。

だから、ねえ。


「私を連れていって…」

か細い、擦れた声で呟く。

ぐちゃぐちゃになった私の心。


だけどその瞬間、何かを悟ったかのように
雨がポツ、と弱くなって暗くてどんよりとしていた空から月の光が見えた―…