そして、
『…あ、め、』
その瞬間、漸く状況を理解したのだった。
布団からはみ出て無防備になっていた手をぎゅっと握る。
その手は、…冷たくて。
『…なんで』
昔から空雨は冷え性で、春夏秋冬構わず、手も足も冷たかった。
だから、その度に私の手を握って『あったけぇ』って言うの。
毎回、毎回カイロ代わりに使われてさ。
『ねえ…あめ…っあったかいでしょ、ねぇ…っ』
空雨のその行動だけでどれだけ私がドキドキしてたか、知らないでしょ。
『あめ、…起きて、あめ…っっあめぇ…っ』
ぎゅっと、ぎゅっっと、どんなに強く握っても握り返してこない。いてえよって、声は病室に響かない。
嘘だ。嫌だ、いやだ、嫌だよ。
ねえ目を開けてよ。笑ってよ。私、謝るから。だからちゃんと、話をしようよ。
返事をさせてよ、ねえ。
―『雫、俺お前のことが好きだ』―
空雨、お願い。目をあけて―…

