「私でよければ喜んで、お相手させていただきますよ」


カウンターを隔てて、真悠は星見と向かい合う。
平日の夕方、学校帰りに制服で立ち寄った真悠の他に、お客の姿は見当たらない。

真悠はカップを傾けて、ホットチョコレートを一口飲んだ。


「何か、いいことでもありましたか?」


何から話そうかと考えていた真悠は、星見のその問いに驚いたように目を見開く。
真悠のその反応に、星見はクスッと笑った。


「見ていれば何となくわかります。この仕事も長いですからね」


口に含んだチョコレートをコクッと飲み干して、真悠は一度カップをテーブルに置いた。


「わかっちゃうもんですか……?」

「わかっちゃうもんですね。今日の佐川さんは、特に嬉しそうな表情をなさっている」


そんなにわかりやすく上機嫌だったのかと思うと、少し恥ずかしい。

真悠は照れたように笑って、まだ中身の残っているカップを弄ぶように手の中で揺らした。