素敵な夜はあなたと・・・


 優也は自分のデスクへと座ると今日の終業後の会長室への呼び出しを考えていた。いったいどんな話を茜にさせようと言うのか。自分ではなく茜に話す内容とは何なのだろうかと気になりだすと仕事が手につかない優也は美佐に求婚していた当時の事を思い出していた。


 まだ茜が中学生の頃の話だ。

 優也は会長に直訴ならぬ直談判に力を入れていた頃があった。


『会長が美佐さんと光一さんの結婚の継続を認めていないのであれば是非私に美佐さんに求婚するチャンスを下さい。』

『お前がどんなに美佐に惚れても、美佐はあの役にも立たない男が好きなんだろう。』

『美佐さんにOKと言わせてみせます。』

『言わせることが出来れば私もこの会社も安泰なのだがな。そう簡単にはいかんぞ。どうも、頑固な所だけは私に似ているようだからな。』



 もし、美佐への求婚が成功していれば今頃は美佐は光一と離婚が成立し優也と結婚していただろう。しかし、優也が訪れた舞阪家では優也は美佐に門前払いを喰らってしまった。話し合うどころか会うこともままならず美佐と光一を離婚させることなど出来なかった。


『黒木、どうやらお前よりあの男の方が余程良い男に見えるのだろうな。』


 求婚の失敗に会長は大笑いをして経過をみていただけだった。手を貸すことは一切せず、優也一人の力で美佐と光一を離婚させろと言うものだった。

 美佐の夫として認めていない光一なのに会社では人事部長という職を与え舞阪の名前まで名乗らせ舞阪家で一緒に暮らしている。どう考えても離婚させたい様には見えない優也は不満ばかりが募っていた。