「少し冷えてきたな・・・・」
ビールを飲み干すと優也は体を震わせていた。もうビールを飲む季節ではないのだと思うと、手に持っていた空の缶ビールを眺めて鼻で笑っていた。
リビングへ戻るとエアコンの温度を確認し室温が丁度二十八度になるように設定されているのを確認した。窓を開けて外の空気を吸おうかと思ったが、いざ、窓を開けるとひんやりとした空気が室内に入ってきた。
その空気の冷たさに優也は身震いしてしまった。せっかく飲んだビールのアルコールがこの寒さで消えてしまったと、急に笑いが止まらなくなり一人冷たい空気に当たりながら笑っていた。
「さっさと離婚すればいいのに」
と、ポツリと呟いた優也は光一の名前が書かれた離婚届を思い出していた。
そして、ポケットに仕舞い込んでいた携帯電話から着信音が鳴り響くと誰からの電話なのか目をやった。すると、そこに表示されていた名前は「会長」だった。
慌てて電話の通話ボタンを押すと優也は畏まった姿勢になってしまった。
「はい、黒木です。」
「茜に何度電話をしても通じないのだが、茜は誰かと通話中なのか?」
「はい、今、学校の友達から電話がきてますので。」
「そうか、ならいいが。お前から茜に伝えて欲しい事がある。明日、仕事が終わったら私の部屋へ来るように。」
「分かりました。仕事が終わってからでよろしいのですね?」
相変わらず会長の事務的で冷たい物言いに優也は溜息が出てしまった。



