素敵な夜はあなたと・・・


 缶ビールを一気に飲んでしまうと缶を持つ手に力が入ってしまった優也はそのまま握り潰してしまった。1本飲んでも酔えない優也は少しアルコールで気分を変えたくなった。

 空になった缶を持ってキッチンへ行き流し台に空の缶を置くと、次のビールを取り出そうと冷蔵庫を開けた。そしてビールを手に持った時、ふと思い出したことがあった。


「そうだ、モフモフ!」


 ホームセンターへ行った時のことだった。買い物中に優也のポケットに入れられた茜の携帯電話にその男の名前で電話がかかって来たのを思い出した。

 ビールを取り出した優也は冷蔵庫を閉めるとプルタブを押しあげてビールを口へ運んだ。

 ビールを飲みながら更にあの時の事を思い出していた。茜は優也に遠慮して電話を掛け直さなかった。そして、今日は優也の前からいなくなった。

 ビールを一気に飲んでしまうと更にもう一本ビールを冷蔵庫から取り出した。そのビールを持ってリビングから出て行くと、茜の部屋のドアの前まで行くと立ち止まり聞き耳を立てていた。

 茜の部屋の中からはキャピキャピと如何にも女子高生の会話の声が聞こえていた。弾む声は楽しそうでとても明るい声だ。優也はこんな声を今まで聞いたことがなかった。友達が相手だとここまで声質が違うのだろうかと握り締める缶に力が入った。



「あ、そうだ。じゃあ、明日、斎藤君のノート見せてくれる? うん、うん、いいよ。見せっこしようよ。うん!」


 優也の知らない世界の茜を見た感じがした。「まだ、子どもだな」と、呟きながらも缶に残っているビールを一気に飲んでしまうとその缶を握りつぶしていた。