夕食を食べたら早く家へ連れて帰った方が無難だと思った優也が茜を連れ戻そうとハッと周りを見ると、茜の姿はどこにもなかった。
母の美佐への土産でも探しているのかと、優也は茜がどこに行ったのか辺りを見渡した。しかし、姿がまるっきり見えないと携帯電話を取り出し茜へと電話をかけていた。
電話をかけたはいいが、優也のポケットから着信音が流れていた。
「まさか?!」
優也がお尻のポケットを手探りすると、いつの間にか茜が挿し込んだ茜の携帯電話がそこにあった。
よくよく考えてみれば茜は手ぶらでウインドーショッピングを楽しんでいた。その茜がスカートやブラウスのポケットに携帯電話を入れておくはずがない。重いし買い物の邪魔にしかならないのだ。
だから優也の空いていたポケットへと電話を突っ込んでいたのだ。それに気付かない優也は完全なマヌケだった。
これでは茜を探そうにも探せるわけがない。
とにかく、茜が行きそうな売り場を徹底して探すしかなかった。
優也は茜がまだ子どもだという事を完全に忘れてしまっていた。無邪気な子供は思いついた売り場を走り回るものだ。4歳児と同じ様にチョロチョロと走り回るのが茜だという事を忘れてはいけなかったと、後悔した時は既に遅すぎた。



