逃げられない政略結婚は覚悟していた。だけど、優也の様に優しい夫ならばこの結婚は悪くないと感じ始めた。
これまでどんな人が夫になるのか不安で堪らなかった。初めて会った昨日の座敷でも優也は表情一つ変えずに座っているだけで何も話さなかったから、どんなに冷酷で怖い人なのだろうかと思った。
けれど、優也との会話が増えれば増えるほど悪い人には見えなく、逆に愛情深くとても思いやりのある優しい人だと感じた。そんな人を夫に選んでくれた祖父には少し感謝したくなるほどだ。
まだ、生活は始まったばかりだが、今の優也には文句付けるところは何もなかった。
「優也さん、これ、玉子を落とせばいいのね?」
「玉子はこうやって割るんだよ。」
「それくらい出来るわよ!」
生まれて初めての料理に、玉子を持つ茜の手は震えていた。
真剣な表情で玉子を睨んだ茜は小さなボールを調理台に置いた。その横に玉子が3つ並んでいるのを見て唾を飲み込んでいた。
「い、行くわよ!」
「落ち着いていいからね。ゆっくり卵の殻をぶつけて割るんだよ?」
かなり腕に力が入る茜を冷や冷やしながら見ていた優也は、やはり自分でやった方が絶対に早いと後悔した。それに、玉子一つ割ったことがないとは予想もしてなかった。
いったい茜はどこまでお姫様として育ったのだろうかと頭が痛くなった。



