素敵な夜はあなたと・・・


 父親を思うと茜の目から涙が滲みだした。そんな茜が不憫になった優也は茜の肩を抱き寄せ頭を撫でていた。


 「父親思いの可哀想な子ども」、優也には茜がそんな子供に見えていた。しかし、夫に肩を抱き寄せられ頭を撫でられた茜は心臓がドキドキしてしまう。


 そう、今夜は初夜なのだから、もしかしたらこのままキスされるのでは?と茜は体が震えてしまった。そんな茜の体が微妙に震えているのに気付いた優也はお風呂に入った後に体が冷えたのかと、茜から離れるとソファーから立ち上がった。



「この話の続きはまた明日にでもしよう。今日は疲れただろう?早く眠りなさい。明日、学校があるだろう?」

「うん、分かった。」



 茜は今夜は初夜だけど、いきなり顔を合わせられた二人の入籍の日であり、引っ越しの日でもあり、生活が一変した日でもあり、その疲労が随分溜まっているだろうからと気を利かせてくれた優也が初夜を見送ってくれたと思っていた。


 そんな優也がとても優しい人だと感じた茜はその夜安心して自分の部屋のベッドで眠ることが出来た。


 茜がベッドで気持ちよさそうに眠っていた頃、優也はベランダへと出ると夜景を眺めていた。ビールを片手に星空を眺めながら。