素敵な夜はあなたと・・・


 リビングのソファーに座り二人で食事の話で盛り上がっていた。優也はビールを、茜にはオレンジジュースを運んできては二人で食事の後の会話を楽しんでいた。



「へえ、じゃあ、お母さんはずっと茜が生まれてから手作りのご飯を食べさせてくれたんだ。」

「うん、お母さんはまだ高校生だったけど、お祖母ちゃんに子育てを習いながら料理も自分で作っていたんだって。離乳食は母親が作るものだとお祖母ちゃんからそう言われたんだって。」



 茜の祖母の話が出たが、優也は会長である祖父は知っていても祖母の存在は知らなかった。美佐が居るのだから妻がいるはずなのに祖父には妻の存在は知られてはいなかった。


 会社では何も情報は流れていなく、社員は会長の妻がどういう人でどこに居るのかさえも知らされていなかった。



「お祖母ちゃんの事知らないの?」

「そうだね。あの会社はどこか閉鎖的な所があって、そう言う情報は出回らないんだよ。一部の人間しか知らなくてね。俺も聞かされていなかったんだ。」



 少し寂しげな表情を見せた優也に茜は少し同情した。祖父は結婚までさせておきながら何も話していないのだろうかと優也をそこまで信用していないのだろうかと考えた。


 けれど、本気で信じていない人物と縁談を組ませるはずはない。いずれ話すつもりだったのだろうと思うと、茜は自分の口から祖母の話を始めていた。