数日後の放課後


「入部届け出してないやつ早く出せよー。今日までだぞ」


担任の宮本蒼先生が大きな声でいう。


宮本先生はこの学校で一番若くてかっこいいから女子生徒からとても人気がある。


「宮本先生ってやっぱかっこいいよねー」


茉凛ちゃんもその1人みたい。


「そーいえば茉凛ちゃんはどの部活に入るの?」


この数日間私はバスケ部の見学、茉凛ちゃんは様々な部の見学に行っていた。


「決めたよ!陸上部のマネージャーになります!」


「どーして陸部にしたの?」


「中学校の時やってたんだ。それに!」


急に声を大きくして


「宮本先生が顧問なんだ!」


満面の笑みを浮かべて言った。


「茉凛ちゃんホントに宮本先生好きだね」


「うん!大好き」


照れながら言うって事は本気なのかな。


「そーいうひなたちゃんはどうなの?望月先輩!」


「へっ!?」


唐突すぎて変な声出ちゃったじゃん!


「とぼけないのー。一緒に帰ったりしてるんでしょ?進展とかないわけー?」


茉凛ちゃんすっごくニヤニヤしてる…。


「進展かぁ…?特にないかな」


「嘘だぁ!だってあんなに仲良さそうなのに!」


茉凛ちゃんがすごくキラキラした目で見てくる。


相変わらず瞳大きいな。


「望月先輩にとっては私なんかただの後輩!恋愛対象には入ってないの。それに…」


「それに…?」


「望月先輩のことは好きだし、尊敬してる。でも、望月先輩とどうこうなろうとか思ってないから」


望月先輩が幸せならそれでいい。


彼がくれた幸せの分だけ私もお返しできたらいいな。


なんて思ってるだけだから。


ん?


茉凛ちゃんなんか怒ってる?


「ま、茉凛ちゃん?」


「なにそれ!好きなら好きって言わないと!誰かにとられてからじゃ遅いんだよ!今の関係が幸せで、楽なのはわかる!けど…。私みたいになって欲しくないから!」


涙目になりながらそう言って教室を飛び出した。


私みたいになって欲しくないから


なんて言われたら何かあったのかって心配になる。


でも、聞けないや。


私も自分のこと話せないし。


傷つけるのが怖い。


傷つくのが怖い。


ああ。


こういうところがダメなんだな。


『ホント自己中だよね』


『みんなに気を配れないなんてキャプテン失格』


中学時代言われた言葉を思い出した。