次の日の朝なかなか慣れない電車に乗る。


ここは田舎なので乗客は少ない。


ガラガラのボックス席にひとりで座る。


片道40分かかる距離なので私はイヤホンをつける。


そして、ひと眠りしようと目を閉じる。


10分後私の最寄り駅から二つ目の駅についた。


私は目を閉じたままだった。


すると私の隣に誰かが座った。


こんなに席が空いてるんだからわざわざここに座らなくても…。


そう思い目を開けとなりを見るとそこには


「おはよ」


望月さんがいた。


「えっ、あっ、おはようございます」


思いがけない出来事に驚きつつもイヤホンを外しながら挨拶を返す。


「電車、同じなんだね」


何気ない会話。


「そうみたいですね」


平然を装って返す。


けどホントはすごくドキドキしてる。


距離が近い。


やっぱり私はこの人が好きだなって改めて思う。


「これから毎日一緒に学校行けるじゃん」


え?


「それに、入部したら一緒に帰れるね」


「一緒に?私が?望月さんと?」


これ以上私をドキドキさせないで欲しい。


そんな目で見られたら私気持ちを抑えられなくなる。


「ダメかな?俺同じ方向の人いないからさ」


「いっいえ!ぜひぜひ!私でよければ!」


幸せだな私。


望月さんと同じ方向の人がいなくてラッキーだ!


ありがとう神様!!


「よかったー。断られたらどうしようかと思った」


望月さんがわらう。


「断るわけないじゃないですか」


好きだから。


そう言いたい。


だけど


私は恩返しするために来たんだから。



そばで支えられたらそれでいい。


この気持ちは胸の奥にしまっておこう。


「あ、それとさ、さん付けするのやめよ」


望月さんは言う。


「あの時はなんの関わりもなかったけどさ、今は違うだろ?『望月さん』って呼ばれると距離感じる」


そんなこと言われるとは思ってなかった。


『距離感じる』


その言葉に少し胸が弾んだ。


「望月…先輩…?」


緊張しながらも先輩と呼んでみる。


すると望月先輩はいつもの笑顔で


「うん!先輩って呼ばれた方がいい!ちょっと気分いい」


私の髪を『くしゃ』ってする。


恥ずかしくなった私は顔を隠すために少し乱れた髪を整えた。