「ひなた」


ぼーっとしていると望月先輩が保健室に入ってきた。


「望月先輩」


そのまま望月先輩はベッドの前においてあったイスに座った。


「肘、大丈夫か?無理すんなって言ったのに」


悲しそうな瞳で私を見る。


そんな顔しないで下さい…。


「すみません。またしばらくバスケはできそうにないです」


「部活のことなら心配するな。マネージャーも見てたしわかってくれるだろ」


「はい。すみません」


「謝るなって。ひなたが悪い訳じゃない」


あいつも謝ってたから許してやって、と私の頭をなでる。


「許すも何も先輩は悪くないので」


「ひなたはさ、いい子すぎる」


え?


「マネージャーに頼まれたからってゲーム練習でたり、怪我したのも自分のせいって思ってる。抱え込みすぎんなよ」


「は、はい」


望月先輩はスッと椅子から立ち上がり


「帰るか?」


と言った。


どうしよう。


光牙が今カバンを取りに行ってくれてるし…。


「お待たせ」


「結城」


二人とも目を合わせて何度かまばたき。


こんな状態作ってしまってすみません…。


「今日は結城が送ってくれるんだな。じゃあ俺帰るわ。お大事に」


望月先輩はふっと笑いながらそれだけ言ってそそくさと出ていってしまった。


一緒に帰れなくて残念。


そしてあんなことがあったのに光牙と二人きりはきつい!


そう思ったのはここだけの話。


「俺達も帰るぞ」


光牙に助けてもらいながら起き上がってカバンを持つ。


「うん」


微妙な距離感のまま駅へと向かった。