ー茉凛sideー


中学校最後の夏休み。


毎日のように幼なじみの海斗とお互いの家を行き来していた。


最近気温が高くて蒸し蒸しする。


今日なんか雨が降ってるから余計に蒸し暑い。


今日は私が海斗の家に行く日。


傘と夏休みの宿題をもって家から出る。


何歩か歩いたらもう海斗の家。


私はインターホンも鳴らさずに


「おじゃましまーす」


勝手に入る。


これはお決まりのこと。


「あら、茉凛ちゃんいらっしゃい」


海斗のお母さんが出迎えてくれる。


「後でお菓子持ってくからゆっくりしてってね」


いつものように海斗の部屋に入る。


クーラーがきいていて涼しい。


なんだ。


海斗はまだ寝てるんだ。


どーんと海斗の寝ているベッドに飛び込む。


「うっ」


海斗は苦しそうな声を出した。


「なんだよ茉凛。いってぇな」


「起きてなかった海斗が悪い」


「なんだと」


私の頬をつねる海斗。


私も負けじとつねる。


幼なじみはタチが悪い。


こういう時遠慮がない。


だんだんエスカレートしていって2人ともベッドから落ちてしまった。


「いったぁ」


「大丈夫か?茉凛」


私の上には海斗が。


傍から見たら押し倒されているような体勢。


「二人とも朝からうるさいよ」


海斗のお姉ちゃんが入ってきた。


この状況はまずくないか…?


「ちょっと海斗!何朝から茉凛ちゃん襲ってるの!」


海斗はやっとこの状況に気づいたようで


私の上からすごい勢いで退いた。


「お、襲ってねえし!」


「ほんとかなぁー?」


「うっせぇ、あっち行ってろ」


手でしっしっとお姉ちゃんを追い払う海斗の顔は真っ赤。


そんな海斗が面白くてつい笑ってしまう。


「笑うな茉凛」


まだ真っ赤なんだけど。


こんな海斗だけど私は昔から大好き。


ずっとかわらない初恋の人。


付き合ってはいないけど、なかなかいい関係だと思う。


海斗は彼女も作らないし、好きな人がいるかもわからない。


この関係を壊したくなくて告白はしない。


告白しなくてもこのままで幸せだから。