「なんか今日怒られてばっかだったなー」


「奈子先輩も先生も怖すぎですね」


入部届けを出し終え、部活も終わっている時間になったので望月先輩と電車に乗る。


ここ数日一緒に登下校しているけど、毎日ドキドキしていることは内緒。


「ひなたさ、ホントに大丈夫なのか?ゲームして」


「あ、はい。多分大丈夫だと思いますよ」


また私の怪我について心配してくれる。


「怪我が悪化したらどうするんだよ」


「あの時は怪我したばかりでしたけど今はほとんど痛みませんし、大丈夫です」


そんな顔しないでください。


本気で心配してくれてるんだって分かるから。


「なら、いいけど」


その言葉と同時に私の体は包み込まれた。


望月先輩の香り。


あの頃と変わらない落ち着く香り。


「も、望月先輩…?」


私は望月先輩に抱きしめられた。


あの時もこうやって抱きしめてくれた。


私を落ち着かせるために。


でも、今はなぜ抱きしめられているのかわからない。


「ひなた…」


耳元で名前を囁かれ、私の体温は急上昇。


望月先輩の腕から私は開放された。


かと思うと望月先輩の整った顔が近づいてきて私は目を閉じた


「…んっ…」


目を開けた時には手の甲で口元を隠す望月先輩がいた。


そして何も言わずに電車から降りていった。


その望月先輩の顔が少し赤かったのは気のせいだろうか。


1人電車に残された私は放心状態。


何が起きたのか。


家に帰ってからもそのことだけが頭の中でぐるぐると回っていた。