おでこを押さえていると、由香からピンクの画用紙がまわってきた。


「自分の名前書いて」

「え、由香が書いてくれていいのに」

「はよ書いて。みどはどうせ書くの面倒くさいだけやろ」

「なんで分かったん!?」


いいから早く、と急かされてシャーペンを握る。

すでにたっくんと由香の名前は書いてあって、あたしは由香の下に書いた。


「柊もね」


あたしが書き終えると、すぐに由香は柊に言う。

由香に逆らえないことが分かったのか、柊は神妙に頷き、一番下に名前を書く。


「副班長はどうする?」


柊からピンクの画用紙を受け取り、野口達郎、の前に赤のポスカで二重丸を書きながら、ふと由香が顔を上げた。

副班長はそんなに仕事がないし、結局は名前だけ。別に誰でもいいんじゃない、と言おうとすると、先に柊が口を開いた。


「由香」

「……え?」

「由香がいいと思う」

「私?」


首を傾げた由香に、柊は頷いて、それからあたしを見て言った。


「みどりもそう思うよな?」


それは確認するというよりも、もう確定しているような言い方で。

有無を言わさないような柊の笑顔を不思議に思いながらも、あたしは頷いた。


「うん、いいと思うけど」

「……じゃあ、私でいっか」


とくに不満もないらしい由香は、野口由香、の前に丸を書く。

柊はそれを見て、にやりと笑っていた。トシちゃんの笑い方によく似ている。


「変なかおー……」

「うっせ」

「ぬうっ」


またデコピン。柊はデコピンするのが好きなんだろうか。