「柊」
「……なに」
「ちゃんとお別れ、言っておきなよー」
向こうを出発するときにも言われたその言葉。
以前は適当に流していたその言葉が、今は少し重く感じる。
分かっている。
分かって、いる。
今日になったら、昨日は思い出になる。
明日になったら、今日は思い出になる。
そうして、この町で過ごした日々は過去になっていく。
「……うん」
納豆を混ぜながら頷く。
父親はまた少し眉を下げて笑い、俊彦は黙ってゴーヤチャンプルを食べていた。
明日、俺はこの町から消える。
分かっているけど、まだ実感が湧かない。
明後日も、明々後日も、この食卓で朝ごはんを食べているような気がするんだ。
テーマソングは終わりに差し掛かり、演出の人の名前が映し出された。
そのとき。
「おっはよーございまーす!」