「そういやさー、なんで由香とたっくん来たん?」


麦茶の入ったコップを両手で持ちながら、みどりは両隣をキョロキョロと見る。

風鈴がちりん、と微かに鳴った。


「なんでって……」


由香が呆れたように溜め息を吐く。

達郎はそんな由香をけらけらと笑いながら、みどりに目を向けた。


「遊ぼって言ったの、みどやろ?」

「あ、忘れてました」

「ちょ、おま……」


自分から言い出したくせに、と達郎も溜め息を吐く。

へらりと笑ってのけたみどりに、由香は顔ごと向けた。


「それよりさー、みど、柊のこと自転車でひいたんやって?」

「えっ、何故それを……!」

「さっきトシちゃんから聞いたんよ」

「ちょっとトシちゃん……!」

「柊ごめんねー、みどがご迷惑おかけしてー」


いきなり話を振られて、上手く反応できずにいると、俊彦は可笑しくて仕方ないとでも言うように、いつものにやにや顔で俺を見てきた。

それに睨み返している間にも、みどり達は会話を続ける。


「あたしは由香の娘か!」

「そんなような感じやん」

「俺と由香の娘やな」

「保護者気取りか!」

「……たっくん、もうみど放ってこかー」

「そやな」

「待って待って!」


みどりはきゃんきゃんと喚いたあと、急に思い出したかのように俺を見た。


「あ、柊も行く?」




「……は?」