なくした時間にいてくれた

お礼を言われたことではにかんだ笑顔を見せた岡くんは「いつでも連絡して」と先に図書室を出ていった。

人目のないところで話をしてくれる岡くんの気遣いに心があたたかくなる。

いい人だな。

花実はいつでも話を聞いてくれる岡くんのことをどう思っていたのだろう。誰にも相談できないことを岡くんだけに話したのは何でだろう。

帰ったら続きを読もう。そこに疑問に思うことの答えがあるといい。

あまり食欲がなく、お弁当は半分ほど残してしまった。作ってくれた母には申し訳ない気持ちになるけれど、無理して食べることが出来なかった。

帰ったら謝らないと。


「ごめんね、全部食べれなくて残しちゃった」


家に帰ってすぐに弁当箱をキッチンに持っていき、残した分を捨ててから洗った。それから洗濯物を取り込んでいた母に謝る。


「いいわよ。お母さんも食欲が出ないから。今は仕方ないわよね」

花実がいなくなり、家はどんよりとしている。